よんでいる日

読書の感想とか

雑記

 卒業論文を書いたり彼女ができたりでブログを書いていなかった。しかし、本は読んでいた。以下、読んだことを覚えている本の覚え書き。

 

『2』野崎 まど

 

 スーパーロボット大戦みたいな小説。いままで作者が書いてきたそれぞれ一作で完結していた小説のキャラクターがひとつのおはなしに集合する。おもしろかった。やっぱり物語はおもしろい。最近は資料ばかり読んでいて、もちろん資料は資料でおもしろいんだけど、やっぱり小説とは違うんだよな。でも知識って物語を楽しむためには必要な要素だから勉強も大事だと思う。あと、伊藤計劃が書いていた「意識はひとが生存するために便利だから生まれた」(かなり乱暴な意訳)というアプローチを、この本もとっているような気がした。伊藤計劃ってすごい作家だったんだな、と思った。

 

『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』ジェーン・スー

 

 この本はエッセイ集であり、テーマはタイトルそのままである。女性という性別に押しつけられる役割や赤い口紅や前髪を甲冑という重くて動きを制限するが、ある意味では身を守るものとして表現しているのがすばらしいなあと思う。そして、「女の」と冠されているが、このエッセイは「女」にとどまらず「男」であるとか「大人」であるとか「子ども」であるとか、ひとを簡単にひとまとめにして理解するときに便利な言葉を入れても成立するタイトルになっている。しかし、そうした押しつけられるステレオタイプをただはね除けようとせず、甲冑というすばらしい比喩で、というのは繰り返しになるので省略する。ちなみにこの作者はラジオのパーソナリティーもされていて、しゃべりもおもしろい。

 

『自分では気づかない、ココロの盲点』池谷 裕二

 

 脳科学に興味のあるひとならほとんど知っていることが実験の紹介とともにわかりやすく解説されている。入門書、そして多少脳科学を知っているひとにはその知識を定着させるのにちょうどいい分量。おかしな言い方だが、ちょうどいい本だ。少なくとも俺にとって。

 

君の名は。』新海 誠

 

 せっかくなので映画についても書く。映画の開始からおもしれーと思って、終わったあとはおもしろかったーと思った。素直に楽しめた。見てから三ヶ月くらい経っているのでほとんど覚えていないけど、これはおもしろいわなあと思ったことを覚えている。印象的な場面で挿入される曲であるとか、美しい背景であるとかいろいろなひとがいろいろなことを言ってくれているので俺が言えることはない。でも特別な関係というか運命の恋人というテーマが主軸にある、言ってしまえば古くさいロマンチックなおはなしをたくさんのひとが信じ、かつそれを受け入れている今の状況はなにが要因なんだろうと思う。このことについてもなにか言っているひとがいるかもしれないし、もしもそれが記事になっているのなら読みたいが、見つけられていないので書く。

 いままでの作品との対比で言えば、明らかに今作の主人公ふたりは行動する人物として描かれている。そして、ぜんぜんこの作品に関係ないが新しく作られた『シンデレラ』も、ただ魔法で助けてもらう女性としては描かれず、自分で行動する女性として描かれていた。『シンデレラ』では、これが現代の社会において正しいとされる価値観だという制作側の意図が、どこをどう改変しているかと言うことによって透けて見えていた。しかし、オリジナル作品である『君の名は。』においては当たり前だが改編がなかった。だから、観客というか俺はロマンチックな世界観に没入できたのかもしれない。でも我ながら書いていてまったくしっくりこない。まあそんなことはどっちでもよく、とにかくおもしろかった。

 

『セラピスト』最相葉月

 

 心の病気というものが日本においてどのように受容され理解されていったかという歴史を扱うパートと、著者自身が心理療法を受けるパートのふたつにこの本は大別される。どちらのパートもすごくよかった。しかし、俺の印象に残っているのは後者のパートで、その中でも飼っている猫が鳴く度に返事をする精神科医の描写がいたく心に残っている。ディテールの書き込みが素晴らしかった。心という曖昧なものを記述するには、詳細な書き込みが必要なのだろうと俺は勝手に思った。

 

 最近はほとんど本が読めていない。はやく卒業論文を書き終わり、好きな本だけを読んでたまにブログを書く生活に復帰したい。というかする。ミランダ・ジュライを再読したい。とりあえず寝る。