よんでいる日

読書の感想とか

日々雑感(『ジャージの二人』長嶋 有)

 ほかに好きな人がいる妻との不和を抱えたまま、父と山奥にあるぼろい別荘に避暑へ来た男の話です。

 

 男は妻への嫉妬や恨みをときおり感じつつ、ある意味では不便な生活を送ります。いちいち風呂を沸かすための薪を割ったり、そういう都会に住んでいればやる必要のないことをして一日を過ごすのです。

 

 それは逃避であると男自身もはっきり自覚しています。逃れてきたのだからしっかりと逃れるということをしなくてはならないという趣旨のことを男は思います。

 

 しかしいくら特別なところに行こうとも、すばらしい体験をしようとも、日常の中で積み上げてきたことは変わりません。なにをしてても妻のことを考えるときがあり、定期的に腹は減り、ときどき山奥マジ涼しいという気持ちになります。

 

 そういった定まらない感情(もともと感情はそういうものですが)が書いてあって、この小説はすごくおもしろいと思いました。

 

 というか、細かい描写が本当におもしろいし、すごいです。すごい文章だなあと俺は思いました。