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読書の感想とか

安直な自己啓発に違和感があるひとへ(『孤独の科学』ジョン・T・カシオポ、ウィリアム・パトリック)

 孤独感という主観的な感情を軸にひとについて語ろうとしている本である。とてもおもしろい。

 

 まず孤独感はなぜ感じるのか?といったことがひとはそもそも社会的な生物であり、集団からはじき出されると生きていくことが難しかったから、仲間はずれにされたときにそう感じるようにできているのだという経緯が語られる。

 

 そしてひとに似た動物であるチンパンジー、ボノボがどのように集団生活を営んでおり、それがひととどんなふうに違うのかということが語られる。

 

 また著者自身の経験やさまざまな心理学実験、はたまた脳科学が引かれてひとはどういったときに孤独感を感じるかということが語られる。

 

 そういったことをまとめると、次のようになる。

 

 孤独を感じるのは人間だから。

 

 そういったある意味では身も蓋もない認識がまずこの本の前提にはある。さびしい? しゃあねえよなあ、にんげんだもの、ってな感じに。

 

 そうしたさまざまな科学的なデータを積み上げて、孤独を科学的に説明するといったことがこの本の大半を分量的には占めている。そこももちろんおもしろい。

 

 しかし、そこが本書のいちばんおいしい部分ではないと俺は思う。俺は、そういって説明された孤独感へどのように対処すればいいのかということが語られた後半が非常におもしろかった。

 

 なぜなら、それは毎月大量に出版される自己啓発のような内容だったからだ。ひとに対して親切にしなさい、起こってもいないことで思い悩むな、具体的な行動をとろう、などなど。

 

 そういったわかっとるわそんなこと、という内容が説得力のある文章で書かれているのだ。最終的な結論自体はそこらへんにある自己啓発書と同じであるにもかかわらず、そこに至る過程が違う。

 

 俺は本書を読み終えたときにはいい人間になろうとちょこっと思ったもの。もちろんそんな簡単に性格が変わったりはしないけども、俺にとっては非常に説得力のある本だった。

 

 最近の安直な自己啓発書に対して違和感があるひとは読んでみるといいかもしれない。役に立つ立たないは置いておいて、とにかくおもしろい本であるので。

 

 

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか

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