よんでいる日

読書の感想とか

筋トレと読書

筋トレと読書は似ている。どちらも軽いものから始めて、徐々に重いものにしていく過程が似ている。それに慣れてくればスピードが上がっていくのも似ているし、実はゆっくりとやった方が効果が高いところも似ている。しかし、気づけば効果を落とさずに、どち…

雑記

卒業論文を書いたり彼女ができたりでブログを書いていなかった。しかし、本は読んでいた。以下、読んだことを覚えている本の覚え書き。 『2』野崎 まど スーパーロボット大戦みたいな小説。いままで作者が書いてきたそれぞれ一作で完結していた小説のキャラ…

日々雑感(『ジャージの二人』長嶋 有)

ほかに好きな人がいる妻との不和を抱えたまま、父と山奥にあるぼろい別荘に避暑へ来た男の話です。 男は妻への嫉妬や恨みをときおり感じつつ、ある意味では不便な生活を送ります。いちいち風呂を沸かすための薪を割ったり、そういう都会に住んでいればやる必…

言葉というイデオロギー(『夜を乗り越える』、又吉 直樹)

ベストセラーの『火花』を書いた芸人、又吉 直樹の本である。 はしがきで作者はこう書いている。 「なぜ本を読まなくてはいけないのか?」「文学の何がおもしろいんだ?」「文学って知的ぶりたいやつらが簡単なことを、あえて回りくどく言ったり、小難しく言…

内向と外交の邂逅が拮抗(『青空の卵』、『子羊の巣』、『動物園の鳥』、坂木 司)

この三冊はいわゆる日常の謎というジャンルに分類されるミステリー小説だ。人が死んだりはせず、誰かが深刻に傷つけられるということもほとんどない。日常で接する人がいつもとは違う行動をとるようになった。その理由はなんだろうということを解き明かして…

生と死のグラデーション(『医師は最善を尽くしているか』アトゥール・ガワンデ)

たとえば医療は手洗いだったりする。病院内で起きる感染は、手洗いが徹底されていないから起きる場合もあるというエピソードが最初に語られる。そして手洗いを徹底することがいかに難しいかということも。 この本の作者は医師である。だから医師から見た医療…

切実さは離れて見ると申し訳ないけどおもしろい(『腰痛探検家』高野秀行)

そのままずばりな内容の本である。この本は腰痛の探検家の本であり、そして腰痛を探検する本である。 著者は「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをして、それを面白おかしく書く。 をモットーに執筆活動をつづける辺境作家」であるそうだ。実際に…

個人的に感じる感情とのつきあい方

たとえば自分の心とは思い通りにならない他人のようなものですとか、不快な感情はセンサーのようなものだという考え方がある。そうだなと思う。 そうした見方もあることを知れば、自分の主観的な感情からすこし距離を置いて考えることができるようになる。あ…

自分にとってとあなたにとっての差について考える人へ(『八月の六日間』北村薫)

いつの間にやら駄目になっていることに気づいてびっくりするものはたくさんあります。生命を育む土壌と化した炊飯ジャーのなかのごはんとか、季節が何周回っても流行することはないなこれとある日ふと気づくお気に入りだったはずのわけのわからない形状のシ…

人生の途中のぼんやりとした終わり(『日の名残り』カズオ・イシグロ)

いつも通りの時間に起きて決められた仕事をこなし、顔ぶれがだいたい一緒の電車に帰宅するため乗り込む。 餃子でも食べようかななどと考えながらいつもの吊革につかまり、窓ガラスにうつる自分の顔が老け込んだことにたまに驚く。 そして昔のああだこうだを…

私や俺とか君などのかんせいの過程(『バグる脳』ディーン・ブオノマーノ)

ここ百年くらいでとてつもない早さで科学が進歩し、生活が豊かな方向へと劇的に変化していったが、我々ニンゲンのつくりは数千年前となんら変わっておらず、いろいろな危険があった原始時代用にチューニングされている脳のさまざまな機能がいまとなってはも…

安直な自己啓発に違和感があるひとへ(『孤独の科学』ジョン・T・カシオポ、ウィリアム・パトリック)

孤独感という主観的な感情を軸にひとについて語ろうとしている本である。とてもおもしろい。 まず孤独感はなぜ感じるのか?といったことがひとはそもそも社会的な生物であり、集団からはじき出されると生きていくことが難しかったから、仲間はずれにされたと…

物語に思うもろもろのこと(『絶望読書』頭木弘樹)

なんで物語って存在するのだろう。小説や漫画を読むのは楽しいし、映画や演劇を見るのはおもしろい。でも、実際の役には立たない。歯痛が治まったり、部屋の空気がきれいになったりしない。 空想上の花子や太郎の懊悩とか喜びとかその他もろもろの感情の変化…

いつのまにかすりへっていたなにかについて(『アメリカン・スナイパー』クリス・カイル)

話す内容はふたつに分けることができる。現実の出来事(昨日のテレビ番組、隣の猫が消えた、会社のおおきな取引が終了した、友人のおもしろいくせ)と、それに対する自分の感想(おもしろかった、心配である、ちょう疲れたけどおれすごくね、そういうとこが…

脳のなかの物語(『妻を帽子とまちがえた男』オリヴァー・サックス)

オリヴァー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』を読んだ。この本は神経医でもある著者があらわしたエッセイ集である。脳の一部が機能不全を起こした患者たちについて書かれた本であり、タイトルもひとりの患者のエピソードがもとになっている。 そうしたエ…

縁と絆(よしながふみ『愛すべき娘たち』)

よしながふみの『愛すべき娘たち』を読んだ。おもしろかった。 「娘」という言葉の関係性を考えさせられた。「私の娘」とか「あなたの娘」とか「彼の娘」とか「このひとはあのひとの娘」とか、○○のという言葉が暗に娘という言葉にはついている。もちろん「こ…

概念としての関西人が小説を語ると(『ラブレス』桜木紫乃)

めっちゃおもしろい本読んでしもたからちょっと以下にちょこちょこ書いとく。この記事は関西弁っぽい文で書くから堪忍や。 『ラブレス』っちゅうタイトルは跳躍すると「愛のない」という意味に日本語ではなる。つまりこの小説は愛について書かれているという…

自意識との向き合い方(ジョーン・G・ロビンソン『思い出のマーニー』)

自意識とどういうふうにつきあっていけばいいのか、という態度を決めることは思春期においてとても重要なことである。自意識が過剰になると他人にどう見られるかということが気になってうまく行動ができなくなるし、逆に自意識がなさ過ぎると自分がされて嫌…

もろもろの日常(橋口亮輔『恋人たち』

むかし話題になったことのある映画だ、とツタヤで棚を眺めているときになんとなく『ぐるりのこと』という映画のDVDが目にとまった。借りてみた。びっくりするくらいおもしろかった。見終わってすぐに監督の名前を検索するとちょうど新作映画が公開されている…

現実を物語にすること(ピエール・ルメートル『悲しみのイレーヌ』)

『悲しみのイレーヌ』を読んだ。この小説はとてもおもしろい。そしてとても悪趣味だ。 異常な連続殺人事件を追う刑事たちの様子がユーモラスに描かれたミステリー、というふうにこの小説はまとめることができる。でもそれだけじゃなくて、俺はカウンセリング…

ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』を読んだ日

ミランダ・ジュライが書いたノンフィクション『あなたを選んでくれるもの』を読んだ。おもしろかった。しかしなにがおもしろかったのかということを言葉にするのは難しい本だった。ということでそれをつらつらと考えながら書いていく。 作者が追い詰められて…